海外プリペイドSIM今昔物語

海外旅行でスマホを使うようになったワケ

スマホを使うようになったのは、2006年頃。日本の「ケータイ」とは違う「スマートフォン」というものが海外では広まりつつあるという情報を聞いていた。日本でもドコモから『M1000』が発売されていた頃だ。

実を言うと当時は「ケータイ」自体は興味のある分野ではなく、「PCをモバイルで使うこと」が興味の対象だった。つまり軽いノートPCに通信端末を装着して、どこででもウェブサイトやメールチェックができる環境が欲しかったわけだ。

実際、2000年頃からモバイルというかノマド的なことをしており、『ThinkPadX20』のCFスロットに『パルディオ611S』を挿して、ファミレスや出先で仕事をしていた。当時はAVを収録したDVDが付属の成人向け雑誌の編集もしており、AV撮影現場の脇でPC系の記事を書いていた覚えがある。

当時はこのモバイル環境で満足していたが、それは国内だけの話。海外に行くと旅行中は常にノートPCを持ち歩くわけにもいかず、Wi-Fiも今ほど普及していないので通信もできない。海外旅行中ももっと手軽にウェブサイトやメールのチェックができないか、ということで思いついたのが「スマホ」だった。というのもこの頃になると、「海外ではプリペイドでSIMカードが購入でき、現地の料金で通信ができる」という情報も広まりはじめていたからだ。

そこで訪れたのが、携帯電話の聖地とも言われていた香港の先達廣場。ビルの中のショップに並ぶ大量の端末の中から見つけたのが、ドコモの『M1000』だった。最初から日本語化されているので、使いやすいだろうというのが選んだいちばんのポイントだが、次に重要だったのが「SIMロック解除済みモデル」だったことだ。

これなら、日本ではドコモの回線を契約すれば使えるし、海外では現地のSIMを装着して使える。国内外問わず、ノートPCを広げなくてもウェブサイトやメールがチェックできる! と認識が変わった瞬間である。つけ加えれば、SIMロックに対して憎悪の感情が植え付けられたきっかけでもある。

ただ、そのM1000も、あまりのモッサリ具合と海外端末購入欲へのたがが外れてしまったこともあり、すぐに『P990i』を購入。M1000はヤフオクで売ってしまったわけだが……。

海外のおもてなしはまずプリペイドSIMから

海外旅行中にスマホで通信をする場合、

  1. 日本のキャリアのローミングを利用する。
  2. モバイルルーターをレンタルする
  3. 現地のプリペイドSIMを使う

というのが一般的だ。方法としては、1のローミングがいちばん手軽だが割高。逆に3のプリペイドSIMは購入時の交渉や設定のハードルが高いものの、料金的には安くなる。

ハードルが高いといっても、最近では空港や観光客の多いショップでは外国人への対応になれた店員も増えてきており、SIMフリー端末さえ用意しておけば、あっさりと購入から設定までしてもらえるケースも多い。

さらに、観光客のSIMに対しての需要が増えて来ているためか、発展途上国などでは路上に立つSIMの売人も多く見かけるようになった。

例えばモロッコのマラケシュでは、観光客の多い通りに売人が立っていて、その場でSIMを売ってくれる。ちなみにマラケシュでは、売人からSIMを買ったほうが、キャリアショップで買うよりも安かった。

東ティモールでも宿泊したホテルの前に数人がたむろしており、観光客とみるとSIMを売りつけに声をかけてくる。複数のキャリアのSIMとそれぞれのチャージ用のバウチャーも取り扱っており、何度か彼らから購入していたため、私が姿を見せるたびに「今日はSIMを買わないのか」と顔を覚えられてしまうほどだった。

というのが以前までの状況だが、ここ最近はドコモauが割安の海外ローミングプランをだしていたり、ahamo楽天モバイルは無料でローミングでのデータ通信ができたりとかなり変わってきている。

現地での購入の手間などを考えると、20GBまで使えるahamoが便利という感じだ。

電波は飛ぶが国境は越えない

日本では地続きの国境がないので、あまりピンとこないかもしれないが、国境が曖昧になってきている欧州では、国を超えて通勤や通学をしている人も多い。また東南アジアなどでも、国境付近の住民はビザなし(移動できる地域や日数に制限はあるが)で越境して商売をしている人もいる。

というわけで、紛争にでもなっていない限り国境近辺は人の行き来が意外と自由な地域が多い。ただし、国境を越えられるのは人だけで、お金と電波は国境を越えられない。国境に近いところだけ両国の電波を拾うというケースもあるが、たいていはその国のSIMを使うかローミングをしないと電波はキャッチできない。

そのため、国境付近では相手国のSIMを販売しているショップが目に付くようになってきた。また、国境にいる両替商がSIMの売人を兼ねていることもある。

中国からベナム国境をバスで超えるときは両替商がバスに乗り込んできて、一緒にベトナムのSIMを売っていた。

また、ベトナムからカンボジアに抜けるときも、ゲート付近にたむろしている両替商のおばさんがカンボジアのSIMを売っていた。しかも購入時にはSIMのサイズを確認し、SIMカッターでそのサイズにカットしてくれるサービスまで提供していた。

現地通貨と同じように現地SIMが国境を越えて生活するのに不可欠というわけだ。ちなみに日常的に国境を越えて生活する人たちには、わざわざSIMを挿し変える必要がないため、デュアルSIM仕様のスマホが人気となっている。電波は国境を越えないので、現地で生活する人もいろいろと工夫が必要というわけだ。

この記事を書いた人
アバター画像

海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けています。

旅人ITライターさとるとして、YouTubeでも活動しています。

中山智をフォローする
旅2.0時代の旅行術コラム
シェアする
中山智をフォローする
TravelBreeze
タイトルとURLをコピーしました