ANA「SFC制度改定」まさかの見直しへ!? 過去最高益の裏で噴出した株主の“リアルな怒り”と経営陣の全回答

Airline

ANAホールディングスは2026年6月26日、第81回定時株主総会を開催した。議長は芝田浩二代表取締役社長が務めた。

第76期の連結業績は、売上高が2兆5392億円、営業利益が2174億円、経常利益が2196億円、親会社株主に帰属する当期純利益が1690億円となり、いずれも過去最高を更新した。国際線旅客事業は、訪日需要や日本発レジャー需要の積極的な取り込みにより旅客数・収入ともに前年を上回り、欧州線などの長距離路線が好調に推移した。

国内線旅客事業もレジャー需要の喚起や大阪・関西万博の開催効果により前年実績を上回った。貨物事業では、日本貨物航空(NCA)を完全子会社化し、ANAの広範なネットワークとNCAの大型貨物専用機のノウハウを融合させることで事業の拡大を図る。Peachは訪日需要等により好調に推移し、AirJapanブランドをANAブランドに集約することでデュアルブランド展開を進め、競争力を強化する方針が示された。

今後の経営環境として、2030年に向けて世界の旅客需要と貨物需要の増加、訪日外国人の増加が見込まれ、成田空港の機能強化も大きなビジネスチャンスと捉えている。同社は新たな中期経営戦略において、2028年度に営業利益2500億円、2030年度に3100億円、営業利益率10%、ROE12%以上という目標を掲げた。一方で、今年度は中東情勢の影響等による燃油価格高騰により、700億円ほどの減益を見込んでいる。

本総会に提出された議案は、第1号議案「剰余金処分の件」(普通株式1株あたり65円の配当等)、第2号議案「定款一部変更の件」(中間配当の実施)、第3号議案「取締役11名選任の件」、第4号議案「監査役1名選任の件」、第5号議案「取締役に対する業績連動型株式報酬制度改定の件」の5つである。すべての議案は賛成多数で原案通り可決された。

また、事前質問が集中した事案として、「国内線新システム移行および新運賃導入」と「スーパーフライヤーズカード(SFC)制度改定」の2点について、平澤寿一・全日本空輸(ANA)社長が経営陣を代表して登壇し、詳細な説明と謝罪を行った。

5月19日に実施した国内線システム移行について、平澤社長はウェブサイトの不具合や窓口の混雑など、多大な不便をかけていることを深く陳謝し、「顧客に寄り添っていないという思いを抱かせてしまったことを大変重く受け止めている」と述べた。現在、経営陣の陣頭指揮のもと社内にタスクフォースを立ち上げ、のべ2000名以上の体制で電話やメールの対応にあたっていると報告し。システム面でも、予約やオンラインチェックインの性能改善、領収書の宛名変更機能の改修などを進めていると説明した。

また、最も安価な「シンプル運賃」において満席時に搭乗を断られるのではないかという懸念に対し、「運賃の種類のみを理由にお断りすることは絶対にない」と強く否定し、システムエラー時も空港カウンターで適切に対応すると強調していた。

続いて、4月23日に発表したSFC制度改定について説明を行い、会員数の増加に伴い主要空港のラウンジ混雑が著しく、2030年に向けて状況がさらに悪化すると想定される中、施設要件上これ以上の拡張も難しいため、新たなルールの設定が不可避であったと背景を語った。

サービス維持の観点から「年間決済額300万円」という基準を設定したものの、発表以降、株主や顧客から非常に多くの厳しい意見が寄せられたことを明かしました。これを受け、平澤社長は「皆様のご意見に真摯に耳を傾け、本制度の改定内容について見直しを行う」と明言し、9月中を目処に見直しの結果を案内すると発表した。

最後に、平澤社長は寄せられた厳しい意見を「もっと良いANAにという叱咤激励」と受け止め、一日も早く本来の利便性と信頼関係を取り戻すために全力を尽くすと述べ、説明を締めくくった。


【質疑応答】

以下は、株主総会における株主からの質問および動議と、会社側の回答の詳細である。

【質問1】 第5号議案についてです。 今までポイントとして与えられているものは、今回の改定のタイミングで株式に変えられるのか、それとも退職までポイントとしてお持ちになって、退職時に株式として発行されるのかという質問が1つ。 それと、片野坂会長と芝田社長については多くの株を所有していただいていますが、直木副社長以下の社内の取締役の方々については、当社の株価が約3000円とすると直木副社長が4900株で金額にすると約1500万であり、決して当社レベルの会社の規模の副社長として、他の役員さんについても多いとは思えません。 この点について、社長もしくは会長のお考えを聞かせていただければと思います。

回答: 現行のポイントで保有している株式についてのお答えにつきましては、後ほど別室から担当しております山本よりお答えを申し上げます。 保有する株式につきましては、社内の持ち株会を含めまして、全役員に株数をしっかりと保有するようにという奨励をしているところでございます。 現在の株数は招集ご通知に記載の通りでございますが、来年以降必ず増えていくものと思っておりますので、どうぞご安心いただければと思います。

ご質問いただきました現行の株式報酬のポイントにつきましては、まず1度譲渡制限付きの株式として取締役に交付いたします。 その上で、今の5号議案のご提案がご承認されましたら、新たな制度として運用を続けさせていただきたいと考えております。

今回の議案で役員の株式報酬の枠を拡大することにつきご承認をいただき、より一層株主の皆様と同じ目線で価値を共有し、業績の拡大に努めてまいりたいと思ってございます。

【質問2】 スーパーフライヤーズカードの話がありましたが、条件は正直言って厳しすぎると思います。 JALはうまいことやったかなと思っており、あのやり方が一番皆が安心するやり方だと思っています。 関連して、芝田社長がテレビ番組等のインタビューで「離反」という言葉を使われたというのがあります。 この言葉は部下が反発するような時に使われる言葉であり、表に向かって発言する時に使う言葉としては非常に不適切だと考えられます。 思ってもない言葉が口から出てくるというのはないですし、何か言い換える方法を考えるべきであるのにそのまま出てくるというのは、経営者としてどうなのかなと感じております。 第3号議案の取締役選任において芝田さんに一言あっていいのではないかと思っており、是非発言をいただきたいと思っております。

回答: ただいま私の使用した離反という言葉に対して厳しいご意見をいただきました。 今後適切な言葉遣い、こちらに努めるようにしっかりと注意をしていきたいと思います。 どうも申し訳ございませんでした。

【質問3】: 第3号議案に関してですが、今回株主の目線から来られている山本(亜土)さんが候補から外れております。 外れた理由がもし何かあればご教示ください。 また、10年以上にわたって社外取締役を務めていただいていたと思いますが、当社の社外取締役の任期として何か社内で上限等があるのかどうか、また独立という観点から何年程度が妥当とお考えかご教示いただきたいです。

回答: 山本取締役には長年にわたり、公共交通・社会インフラに携わる事業者の観点から経営に関する大変貴重なご意見・ご提言をいただいてきたところであり、深く感謝をいたしております。 今回候補から外れていることにつきましては、ご本人とのお話し合いの中でご本人の希望を踏まえ決断に至ったところでございます。 社外取締役の任期について明確な社内の内規を持っているところではございませんが、他社の例を参考にしながら10年程度を目処に判断をさせていただいているところでございます。

【質問4】: 新運賃の件や新システムの件などについては、ネット等で色々言われているところだと思いますので、ちゃんと受け止めていただきたいです。 国内線に関して収益が厳しいというお話ですが、コロナ禍であったようにA380を使っての遊覧や機内食、御朱印帳などのグッズ販売等で、地域創生に繋がるようなものがいかがかなと思っています。 私も御朱印帳を買わせていただいていたのですが、日数が経ってから行ったら売り切れて追加も入っていないという形でした。 そういったグッズや地域に足を運ぶようなことが経営の一助になるんじゃないかと思いますので、そういったお考えはないでしょうか。

回答: コロナ禍で大変経営が厳しい時に、A380の遊覧飛行など様々な航空外収入の増加に向けた取り組みを重ねてまいりました。 そのうちグッズの販売や御朱印帳、機内食の販売等については継続的に進めているところでございます。 2021年にANAあきんどという会社を設立いたしまして、全国の支店も活用してそれぞれの地域に根差した様々なビジネスを考えております。 今後とも地域に貢献できる地域創生ビジネスにしっかりと取り組み、また非航空における増収策についても講じてまいりたいと思います。

【質問5】: 私の知り合いに元片野坂さんの部下がおりまして、国内線にアマデウスを導入するという話はもう10年近く前から提案していたと聞いております。 もしその時に導入されていればここまで混乱することはなかったのではないか、国内線のシステム変更と運賃変更を同時にしてしまったがゆえにここまで混乱がひどくなってしまったのではないかと感じます。 その判断をどなたがなさったのでしょうか。

回答: 国内線のアマデウス導入については、元々国際線に導入する時に一緒にすべきか議論して進めてきておりました。 ただ、その時には同時に導入することがかなり混乱をするだろうということで、まず国際線から導入させていただき、その上で改めて国内線と国際線の統合化を図っていくと判断しております。 今回の国内線の導入にあたり、せっかくアマデウスの機能を入れるのであれば、運賃に関してもグローバルスタンダードに向けて、お客様のニーズに沿ったものに導入するというのが目的の1つでございました。 様々な不具合や、お客様に寄り添ったサービスをご提供できなかったところは大変反省すべきところであり、これから1つ1つお客様に寄り添った仕組みを作っていきたいと思っております。

【質問6】: SFC改定の見直しということになりますが、「年間300万円を使わない人はラウンジから排除すべきだ」という判断の前提が変わっていないのかどうかということを教えてください。

回答: 今回のスーパーフライヤーズカードの制度改定の見直しという決断をさせていただいたところですが、私どもといたしましてはサービスを通して全体の利便性の向上を図るということが第一の目的でございました。 ところが結果的に多く皆様からのご意見をいただくことになり、お客様のお気持ちにしっかりとお応えすることができなかったというところが、今回見直しに至った理由でございます。 9月までには皆様からのご意見を反映する形で見直しに着手してまいりたいと思います。

【質問7(動議)】: 1号議案、3号議案、5号議案の動議なんですけれども、昨年のチャールストン国際空港で止まってる飛行機にぶつけるという事故がありました。 これはシミュレーターばかりで訓練しているからです。 芝田社長が事故を起こしてでもボーナスを取るというのはとんでもないので、役員賞与は自主返納して全パイロットに実機で訓練させないといけません。 第5号議案については、現場の経費削減をして役員だけ儲けるというのはとんでもないことなので反対します。 第1号議案は、日本航空と同じく配当性向31%で計算すると107円の配当が妥当であり、そうしていかないと株価が上がってきません。

回答: 第1号議案の配当に関わる件でございますが、現在の配当性向が18%強とまだまだ低いという自覚がございます。 今後利益成長を確実なものにすることによって配当性向をしっかりと高めていく所存でございます。 今回の動議につきましては、後ほど原案とともに一括して採決をさせていただきます。 給与の自主返納等に関するご意見につきましては貴重なご意見として、第5号議案に対する動議につきましては反対のご意見として承らせていただきます。

【質問8】: 新システムの運用状況について、システムのレスポンスが非常に遅いことや、ダイヤモンドデスクに電話しても20分以上かかることを実感しています。 タスクフォースにおいて、予約以外の機能の正常化と電話サポートの逼迫解消について具体的にいつ頃までに解決する目処が立っているのか教えてください。 さらにこの問題を回収するにおきまして、今後どの程度の追加費用がかかるのか差し支えない範囲で教えてください。

回答: 電話が繋がりにくくなっており、大変ご迷惑をおかけしておりますこと改めてお詫び申し上げます。 1日も早い正常化に向けまして、グループ社員を含め・間接部門からも直接部門からものべ2000名を超える応援社員を派遣しております。 領収書や搭乗証明書の発行など、電話を取らなくてもできる作業を極力応援社員の方で対処させていただくことによって、電話が取れるような環境を作るべく努力しております。 Webでの操作エラーの削減や処理の増加に向けたシステム改善に全力で取り組んでまいります。

回答: 予約センターのタスクフォースとは別にシステム部門でもタスクフォースを組んでおり、優先順位をつけ早急な不具合の解消や画面のレスポンス等の改善を日々続けております。 具体的には6月末に1度大きなものをリリースした上で改善を図っていき、お客様のご搭乗が増える夏休みの前にはもう1度大きなリリースをしたいと考えております。 追加費用については具体的なシステム改善内容によって変わってくるため申し上げられませんが、費用についてもしっかりと用意した上でお客様の不便にならないような改善を進めてまいります。

【質問9】 新運賃制度の開始以降、シンプル運賃では事前の座席指定ができないことや預け手荷物の制限などがあり、LCCのように追加料金を支払えば利用できる仕組みもありません。 このような利用者の声を経営陣としてどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。 また今後、座席指定や預け荷物を有料でプラスできるようにするなど、見直しを検討される可能性はあるのでしょうか。

回答: シンプル運賃やスタンダード運賃などのラインナップで展開させていただいておりますが、事前の告知には丁寧にお務めしてまいったつもりではございますが不十分さがあり、運賃の特性についてさらなる周知を図ってまいりたいと考えております。 一方で、シンプルやセールを購入しても「事前の座席指定だけは有料でいいから追加できないか」というお声をいただいております。 そういったお声に対応すべく、事前座席指定をいくばくかのお金を追加していただいて可能になるような付帯サービスをなるべく早期に開始したいということで、現在システム対応を開始しているところでございます。

【質問10】: 種子島空港から鹿児島経由で羽田に帰った際、JALとANAで乗り継ぎがありましたがスルーチェックインができ素晴らしいサービスでした。 今後JALとの地上での提携はどの程度進められるか、またライバル会社とどこまでどう協調していくかお答えください。

回答: 日本航空さんとは、競争領域がない協業を進めることで相互にメリットがあるような施策について今協議をしております。 特に地方空港において、グランドハンドリングの車両やスタッフの共有等をできる限り進めております。 コードシェアという営業戦略的なところはまだできませんが、地域会社を通じたスルーチェックインなどのサービスも可能ではないかということで提携を進めているところです。 今後もお互いに切磋琢磨しながら、協業できる部分と競争できる部分を高めてお客様に還元できればと思っております。

【質問11】: 第2号議案の定款一部変更で中間配当ができるようになるとのことですが、この中間配当は期末の分にプラスして支払われるのか、それとも年間の分を分ける感じになるのか方向性を教えてください。

回答: 今期の配当につきましては60円を予定しております。 議案承認後には、この60円を分割して30円を中間配当とし、機動的に配当を実施することでお客様(株主様)の利便性を高めるという予定をしております。 今後業績の上昇等について、この額の見直し等は当然出てくるところでございます。

【質問12】: 今回の新システム導入に関して、ここまで不具合が出ると想定できる範囲だったと思うのですが、リリース判定はどういう形で行って経営陣が最終的に判断したのか気になります。 また、アマデウスはソースコードを弄れないため、システム改修はアマデウスの方に丸投げする感じなのでしょうか。

回答: アマデウスのシステムについては、1年前に予約システムを移行した時点で、5月19日から搭乗機能に移行するというリリース判定をしてまいりました。 様々な角度から経営全員で確認した上で判断して進めてまいりました。 アマデウスに丸投げしているのかという点については、アマデウス側で改修していただくこと、そして私たち側で改修しているものもたくさんございます。 タスクフォースの中にはアマデウスのメンバーも入った上で、切り分けや障害対応のスピードアップを図っております。

【質問13】: 成長戦略に期待している一方で、ロシア上空規制や専門人材の確保などに課題があると思います。 安全や品質を維持しながら成長を実現していくための人的・機材・システム等の先行投資と、株主還元のバランスについて、どのような優先順位で意思決定されているのかお聞かせください。

回答: 事業の継続的な利益成長を実現していくことが、結果的に株主の皆様への還元の拡大に繋がります。 2030年度までに3.3兆円の投資を予定してございますが、機材やDX、人財を含めた成長投資にしっかりと向けていきます。 成長投資を通して事業の継続的成長を果たし、それが結果的に株主の皆様への還元に繋がるというサイクルをしっかりと回していきたいと思っております。


今回の株主総会では、過去最高の業績と次期中期経営戦略による力強い成長シナリオが示される一方、足元で発生している国内線新システム移行に伴う混乱やSFC制度改定への不満など、顧客との信頼関係に関わる課題が浮き彫りとなった。経営陣はこれらの問題に対し、率直な謝罪とともにタスクフォースの立ち上げや制度見直しを表明し、顧客の声に真摯に向き合う姿勢を見せている。

今後は、DXや機材等への成長投資を通じた収益拡大と並行して、現在の混乱を早期に収束させ、顧客利便性とブランドへの信頼をいかに回復していくかが、同社の持続的な企業価値向上の試金石となりそうだ。

タイトルとURLをコピーしました